イヌワシ

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過去にイヌワシは一度しか見たことはない。随分と以前、伊吹山のお花畑を歩いていた時に、南側の崖の上に現れて、しばらく旋回したのち南西尾根の方へ滑るように飛んで行った。『風の精』と呼ばれる意味がその時によくわかったし、あのような飛行をする鳥は初めて見た。滑るようにという表現しかできないが、ほとんど翼どころか羽すら動かしていないのではないかと思えるような飛行だったように思う。少なくとも羽ばたいてはいない。一度見てもらえればわかる・・と以前から聞いていたが、確かにこの目で見ると引き込まれそうな凄さを持っている。若い頃から山を歩き、主に植物を見てきたが、イヌワシと同じ感動は以前話したグランドティートンを初めて見たときのものと同じように、またそれは植物で言えば、高山でコマクサやウスユキソウに出会えたときのものと同じようにも思える。鳥で言えばトビ、山で言えば家の裏山、植物で言えばハコベでも同じだろうに感動が全然異なる。共通して言えるのは人を寄せ付けないような常に厳しい環境にそれらのものがあるということ。そして、それらを感じ取る感覚はもともと自分の中に備わっているように思えるし、古来、日本で岩や大木を神として祀ってきた感覚と同じだろう。アイヌ民族も、ネイティブアメリカンも同じものを大切にしてきたはずである。

近頃は登山ブームでどこへ行ってもすごい数の人たちに出会う。山小屋など驚くほどの人が押し寄せるし、私以上の高齢者が驚くほど多くなってきた。昔のように静かにひっそりと山歩きがしたいと思うことがよくあるが、これらの人々が山に押し寄せる理由も同じだろうと思う。『なぜ山に登るのか?』と決まり文句のようによく言われるが、その理由も同じかと思う。そこに神がおわすから・・と答えた人がいたが、皆自分の中に持っているものだろう。

人生の中でそのことを感じ取る経験は大切なこと、生きていく中で最も大切なことに思える。

 

コマクサ(ケシ科)乗鞍岳にて

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コマクサ(ケシ科)秋田駒ヶ岳

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